依然として低迷するソニー[6758]から「Report2015 第98期定時株主総会招集ご通知」が届きました。
表紙をめくると社長兼CEO平井一夫氏のむなしい顔と共に「ごあいさつ」が載っています。


2014年度(2014年4月1日から2015年3月31日まで)の連結業績につきましては、モバイル事業に関する大幅な営業権の減損やその他の事業構造の変革にともなう費用の計上などにより、当社株主に帰属する当期純損益は大幅な損失となり、中間配当及び期末配当ともに見送らせていただく結果となりました。
ソニーは、主力と位置づけたモバイル事業が大幅な赤字を生み出し、上場来初の無配となりました。
Contents
ソニー[6758]は「金融業」頼りの状況

上記は今回郵送されてきた「Report2015 第98回定時株主総会招集ご通知」にも記載されているソニーの事業セグメント別業績です。
現在のソニーの業績を支えているのは1,933億円の営業利益を出している金融事業(ソニー生命・ソニー損保・ソニー銀行)なんですね。
その中でも収益に貢献してるのはほぼソニー生命です。つまり、ソニーはかつてテープレコーダーやトランジスタラジオ、ウォークマン等を生み出したモノづくりの会社ではなく、「不幸な事が起きた時に当選金が支払われる宝くじ」で何とか食っている企業と言っても過言ではありません。
一方、平井CEOが主力と位置づけているモバイル・コミュニケーション事業(携帯電話)は▲2,204億円の営業損失ということで大きく足を引っ張っています。
どうしてこうなってしまったのでしょうか?
切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか

このたび、清武英利さんが書いた「切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか」を読みました。清武さんは東京読売巨人軍の元球団代表で現在はジャーナリストをされています。
かつてモノづくりの最高峰であったソニー[6758]の元社員に取材を行うことで、外側(ユーザー、株主)には見えない内部事情を知ることができます。
この本は、1946年に井深大と盛田昭夫が起こした東京通信工業がどのような社風や心持でモノづくりをしていったのか、社員やその家族を大切にする2人の人柄を先ず描いています。これがかつて愛されたソニーの本当の姿です。
しかし、2人が携わっていた社員を大切にする会社は、17年間で6度のリストラをするような切り捨ての会社に変貌してしまう。
出井伸之に始まりハワード・ストリンガー⇒平井一夫という無能な「リストラ型」経営陣を背景に、通称「ガス室」と呼ばれるソニーのリストラ部屋に行く人・その家族たちはどのような経緯でどのような気持ちを持って過ごしていたのか?
そしてソニーを辞めることを決断した人たちが新天地でどのように再生しているか?を描いています。
なお、取材を受けた社員は人事部の女性以外全て実名で登場します。
iPadよりも早くタブレット端末をデビューできるチャンスはあった
その中の一節。
ところが、小方たちの新型端末の試作品が完成し、通信事業者を始めとする企業と提携話が決まっても、役員会から最終的なゴーサインは出なかった。
(略)2010年1月27日、衝撃的なニュースがアメリカから入ってくる。ソニー首脳がぐずぐずと決断を先送りにしているうちに、最大のライバルであるアップルがタブレット型コンピューター「iPad」を販売する、とサンフランシスコで開かれた製品発表会で発表したのだった。
ソニー社内は大騒ぎになった。iPadは4月に米国で販売が始まると、初日に30万台を売り、ダウンロードされたiPadアプリは100万本を数えた。すると、ソニーはこれまでの方針をあっさりと捨て、あわててiPadの二番煎じのようなタブレットを売り出すことになった。
何とも悲しすぎる。
極秘のプロジェクトということで手を挙げて集まったエンジニアがタブレット端末の開発までこぎつけたのに対し、ハワード・ストリンガーを始めとする経営陣たちがノロノロと決断せず、アップルに先を越されてしまう。
今のモバイル事業の不振は今に始まった話ではなく、何年も前から、なるべくしてなっているのである。
そして、さらに酷い仕打ちが
方針転換後の2010年7月、「VAIO&Mobile事業本部」が創設され、新規事業創出部門はそのタブレットチームと統合された。会社の希望の星だったチームは、一転してリストラの対象となったのだった。
そしてリストラの対象となった人はどうなるのか。
ソニーのリストラ部屋「キャリアデザイン室」
キャリアデザイン室はキャリア開発室からただ名称が変わっただけの組織で、「社員がスキルアップや求職活動のために通う部署」と説明されている。2007年ごろには各事業部門ごとに置かれていたが、このころには「キャリアデザイン推進部」という独立した部門のもとにまとめられていた。いずれにせよ、社内失業したとされる社員が集められるところだ。退職勧奨を受けた中高年社員の「追い出し部屋」とも言われている。
通称ソニー村(旧本社周辺)と厚木、仙台の3箇所にに「キャリアデザイン室」という部屋があり、そこに送り込まれたら最後、他の社員と話せないように全員が同じ方向を向いた席に座り、ただひたすら求職活動を行う。
もはや、誰のため何のためにあるのか?存在意義を疑ってしまいます。
内部者のツイッターアカウント「Morita Akio2」
そのような経営陣を静かに批判しているのが、この本の中で取り上げられている「@Moritaakio2」というツイッターアカウント。
ソニーの内部にいる社員が内部者しか知りえない情報をツイッターのタイムラインに流して経営陣を批判しています。
<日本企業のくせに、年間累計で30日も以内大勢の外国人役員にどれだけ報酬を支払っているんだ。ストリンガーなんて年俸8億6000万円のうち、びた一文日本国内でお金を落とすことなんてないのに。日本国内で発生する費用は全て会社の経費。報酬はそのまま米ドルに換金されて、ニューヨークとロンドンで贅沢な消費に費やされる。
そんな高額報酬を決める報酬委員会メンバーはストリンガーが選んだ、名前だけが大きい企業を引退したご老人たち。4ヵ月に1回の定例役員会に顔を出すだけで年間1000万円以上をさらっていく連中が、ストリンガーに反旗を振ることなどない>
その3ヵ月後のつぶやきでは、米国在住のストリンガーが、東京・恵比寿ガーデンプレイスにあるウェスティンホテルのスイートルーム(1泊50万円以上)を常時貸し切り契約にして、いつでも宿泊できるようにしている、と批判した。
ちなみに、ストリンガーがウェスティンホテルに泊まることはほとんどなかったようです。
ソニーグループで働く統括部長以上を除く、社員及び契約社員および派遣社員に向けたアドバイス。 「コンプライアンス部が実施するイーラーニングを素直に受け取って内部告発するとトンデモナイ目に遭うから注意した方が良い。 =>人事と組んだ【踏絵】 — Morita Akio (@Moritaakio2) 2014, 9月 2
ソニーコンピュータエンタテインメントの受付嬢たちへのパワハラ・セクハラで干された挙句、自主退職していった武田淑広が 再びSCEに戻ってきて前回同様のパワハラセクハラを行っているという噂の事実確認をソニーのコンプライアンス及び人事部は調査したほうがいい。
— Morita Akio (@Moritaakio2) 2014, 7月 12
トヨタの社長が2.3億の年俸で、ソニーの社長が3.6億!?
— Morita Akio (@Moritaakio2) 2014, 7月 9
他にも興味深いツイートがたくさん。ちなみに、ソニーの法務・広報部門が躍起になって犯人探しをしているようです。
役員報酬を決めた後に最終赤字を下方修正する「後出しジャンケン」
電機業界で「一人負け」が続くソニーがいよいよ追い込まれている。平井一夫社長は9月17日、今期の連結業績の見通しを2300億円の最終赤字に下方修正。さらに1958年の上場以来続けてきた株主への年間配当を初めて無配としたことにある株主は憤りをあらわにする。
「平井社長は5月に500億円の最終赤字の見通しだと発表し、6月の株主総会で役員報酬を決めたばかり。そのわずか3か月後に、『やっぱり2300億円でした』というのだから、自分の高額報酬を維持するための“後出しジャンケン”だったのかと疑いたくなる」
平井社長の昨年度の年収は3億5920万円。今期中には不振のスマホ事業の従業員1000人削減を発表する一方で、あまりに「トップに甘い」という印象は拭えない。
なお、その前年度の年収は2億180万円のため、約1.8倍のアップのようです。いやはや、なかなかの仕打ちですね…。確信犯と突っ込まれるのも無理はなさそうです。
そして上場来初の無配…
株主としても、「うわー、こんな企業の株持ってたのか…」と、もはや呆れてしまいますね。そして、上場来初の無配です。
6月23日にグランドプリンスホテル新高輪で株主総会が開かれるようです(行ってきました↓)。
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ソニー[6758]の主要指標とチャート(2015年5月29日現在)
主要指標
ソニー[6758]の主要指標 | |
株価 | 3,862円 |
単元株数 | 100株 |
最低購入代金 | 386,200円 |
PER(会社予想) | (連)30.74倍 |
PBR(実績) | (連)1.95倍 |
ROE(実績) | -5.51% |
配当利回り(会社予想 | ―% |
チャート(10年)

アベノミクス相場が始まってから上昇はしているものの、リーマンショック前の水準にはもまだ程遠い状況です。
底値に近いところで購入した100株を保有していますが、しばらくホールドして様子見しようと思います。
まとめ
この本はソニーの株主、ソニー製品のファン・ユーザー、および大企業ソニーの現状を知りたい方にオススメです。
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「出るクイ」を求む! ―SONYは人を生かす