スムストック住宅の評判。ハウスメーカーの既存顧客「囲い込み」策

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マイホーム購入は「人生の一大イベント」と言われます。マイホームの選択肢には、注文住宅・新築建売分譲に加え、中古住宅という選択肢があります。

中古住宅の中には、大手ハウスメーカー10社が推進する中古住宅「スムストック」があります。

今回は、スムストックについて、「スムストック」の購入を検討している方(買主)、「スムストック」の査定・売却を検討している方(売主)の方に向けて書いていきます。

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日本の住宅の平均寿命は「30年」という社会背景

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引用元:スムストックの必要性|スムストック

国土交通省の調査による住宅の平均寿命比較では、日本人の新しい物好きの性格もあってか、日本の建物の平均寿命は、欧米諸国に比べて短く「約30年」と言われています。

マイホーム売却にあたり不動産流通市場に売り出す際、建物の査定価格は以下のように評価するのが一般的です。

  • 木造:約20年~22年で残価(価値)ゼロ
  • 軽量鉄骨の場合は約25年~27年で残価(価値)ゼロ

20年前に建築し、家族との思い出がいっぱい詰まった我が家が「残価ゼロ」とされてしまうというのは、なかなか辛いことだと思います。

 

大手ハウスメーカー10社の中古住宅=スムストック

そこで、大和ハウス工業[1925]や積水ハウス[1928]などの大手ハウスメーカー9社(現在は10社)が優良ストック住宅協議会という組織を作り、「大手ハウスメーカーの建物は、中古流通時にしっかりとした評価をしよう」と作り上げた仕組みが「スムストック」です。

協議会に加盟しているハウスメーカーおよび関係不動産会社は以下の10社です。

ハウスメーカー 関係不動産会社
旭化成ホームズ 旭化成不動産レジデンス
住友林業 住友林業ホームサービス
積水化学工業 セキスイハイム不動産グループ
積水ハウス 積和不動産グループ
大和ハウス工業 日本住宅流通
トヨタホーム トヨタホーム販売
パナホーム パナホーム不動産
ミサワホーム ミサワホームグループ
三井ホーム 三井ホームエステート
ヤマダ・エスバイエルホーム ヤマダ・エスバイエルホームグループ

従来、不動産売買仲介会社が売却査定をする際、一定の年数が経過していれば「大手ハウスメーカーで建築した建物」も「安い工務店で施工した建物」も建物査定をゼロと評価して不動産売却査定をします。

営業のさじ加減で「ハウスメーカー施工で構造もしっかりしているので、査定をプラス評価しましょう」というのはよくある話ですが

一方のスムストック査定は、ハウスメーカー10社独自の「不動産売却査定システム」です。

そして、スムストック査定を行う資格を持つのは、優良ストック住宅協議会が主催する試験に受かった「スムストック住宅販売士」のみとなります。

スムストック認定の条件…たいした条件ではない

スムストックの認定条件は以下の3つです。

  • 住宅履歴 : 新築時の図面、これまでのリフォーム、メンテナンス情報等が管理・蓄積されている
  • 長期点検メンテナンスプログラム : 建築後50年以上の長期点検制度・メンテナンスプログラムの対象になっている
  • 耐震性能 : 「新耐震基準」レベルの耐震性能がある

引用元:スムストックとは?|スムストック

原則、上記に該当していればスムストックと認定し、協議会独自の査定基準・計算手法を用いて査定します。計算は複雑な方程式で、一般のユーザーには分かりづらい計算方法となっています。

上記のスムストック認定条件を見てみると、もっともらしいことが並べられていますが、残念なことにたいした条件ではありません

「新耐震基準」に至っては、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物は全て該当します。むしろ、かなりユルい条件とさえいえます。

スムストックの査定方式…建物価格が高く出る

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  • 構造耐力上必要な部分(以下スケルトンという)と内装・設備の部分(以下インフィルという)に分けて査定する。
  • 構造躯体のスケルトン部分を6割とし償却期間を50年で査定する。
  • 内装設備のインフィル部分を4割として償却期間を15年で査定する。

引用元:スムストックの査定方式|スムストック

スムストックの査定方式では「構造(スケルトン)」と「内装(インフィル)」の価額をしっかり分けたうえで、構造の減価償却にかかる期間を50年と長くしている=「大手ハウスメーカーの構造部分はしっかりしているんだから50年は持つでしょう」という考え方を査定方式に用いています。

一方、一般的な従来建物査定では「建物の構造と内装設備を合わせた新築当時の値段」をベースに査定します。

※従来建物査定計算参考例:「新築時1㎡当たり単価(円/㎡)×建物面積(㎡)×(1-築年数/耐用年数)」

つまり、端的にいえばスムストックの査定方式を用いると、従来建物査定と比較した際に「建物の査定価格が高く出る」ということになります。

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スムストック査定は誰得なのか?

「スムストック査定」によるメーカー保証の延長等はない

しかし、「建物査定価格が高く出る」スムストック査定には大きな矛盾があります。

ハウスメーカーお抱えの「スムストック住宅販売士」が構造(スケルトン)と内装(インフィル)を分けて査定をし、建物査定価格を従来査定よりも高く出すにもかかわらず、それ(スムストック査定)によるメーカー保証の延長等の担保はないという矛盾です。

たとえば、以下のようなケースであれば納得がいきます。

ケース1

営業マン
構造をチェックしたところ、まったく問題がありません。

ハウスメーカーによる保証を5年間延長します。保証の延長(構造がしっかりしている裏付け)もできるので、買主様にも安心してご購入いただけますよ。

スムストックに認定することで、他の不動産売買会社よりも高く建物を評価します。

上記のような仕組みであれば、売主にとっても買主にとってもメリットがあり納得ができる査定システムといえます。

ケース2

営業マン
構造部分をチェックしたところ、何か所かメンテナンスした方が良い点が見つかりました。

100万円程の費用をかけてメンテナンスいただければ、「5年間保証を延長」し、スムストックとして認定します。メンテナンスされない場合は、残念ながらスムストックとして認定できません。いかがいたしますか?

上記のケースについても、納得ができます。

激ユルの「認定条件」と「独自の査定方式」以外、従来査定と何ら変わらない

しかし、現実は以下のようなものです。

営業マン
認定条件をクリアしたハウスメーカーの建物なので構造もしっかりしていて問題ないです。

そのため、建物査定価格を高く評価します。

しかし、ハウスメーカーの保証が既に切れている場合、保証の延長はしません。

上記の激ユルの「スムストック住宅認定条件」をクリアしたぐらいで、建物査定価格を高く評価する?でも、買主にとってのメリットはない?

「建物良し、構造良し、でもその担保なし」…であれば、他の不動産会社が査定する従来の査定方式に比べたスムストックならではのメリットってないのでは?スムストックって誰得?

 

大手ハウスメーカーがスムストックを普及したい理由

「リフォームの受注・仲介手数料の取得」そして「囲い込み」

大手ハウスメーカー10社がスムストックを普及したい理由(必要性)については、スムストックの公式ページに記載されています。

しかし、それは建前でしょう。本音は下記の通りと推察します。

  • 日本の人口減少により「新築住宅のマーケットは今後縮小」する
  • 子会社の「リフォーム事業・売買仲介事業」で関与して穴埋めをしたい
  • これまで獲得した既客に対してのアプローチの手段とし、囲い込みをしたい

まとめますと、親会社(ハウスメーカー)の新築事業の展望が厳しいため、子会社(リフォーム事業・売買仲介事業)で穴埋めをすべく既存顧客を囲い込みしたいということです。

これがハウスメーカー側の思惑であり、スムストックを普及したい本当の理由と推察します。

事業セグメントが「住」に偏っているハウスメーカーほど「スムストック頼り」

大手ハウスメーカー10社の一角、大和ハウス工業[1925]の基幹事業は依然として「住宅事業」です。

しかし、他にも「商業建築事業」、「観光事業」、「ホームセンター事業」等があり、事業のリスクを分散しています。もちろん、スムストックが推進されていくのは同社にとってもメリットがありますが、スムストック頼りという状況ではありません。

他方、事業セグメントが「住」に偏っているハウスメーカーは、今後新築事業の展望は厳しいことが想定されますから、スムストック頼りの状況は否めないでしょう。

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スムストックが普及・定着しないと考える「致命的な」理由

不動産流通市場で価格を決めるのは「売主と買主」である

わたしは、スムストックが普及・定着するには相当厳しいと考えています。

理由は、市場経済で価格を決めるのは「当事者である売主と買主である」という致命的な理由です。

売主やそれを取り巻くハウスメーカーおよび子会社の不動産売買仲介会社が、売主に対して「大手ハウスメーカーのスムストック住宅だから建物をしっかり評価して売り出しましょう」と言ったところで、買主がその価格で納得しなければ売買は成就となりません。

中古住宅は流通市場です。新築のようにハウスメーカー(≒売主)が一方的に価格を決めて施主(≒買主)に販売するのとは違います。

厳しい意見となりますが、買主にメリットが見当たらない現状では、スムストックは「査定価格が高く出るだけで、成約価格は追いついてこない」ハウスメーカーの押しつけ査定方式と言うのが妥当でしょう。

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株式市場でも価格を決めるのは「売主と買主」である

余談ですが、売主と買主の合意により価格が形成されている株式市場でも同じことが言えます。

大手家電メーカー「シャープ」の株式は現在(2015年2月21日現在)245円ですが、リーマンショック前は2,000円を超えていました。

リーマンショック前に高値掴みした方が「いや、シャープはAQUOSブランドやIGZOもあるし、大手メーカーだし、大丈夫。2,000円で売る!」と2,000円で指値をしていて売れるでしょうか?売れません。

なぜならその値段で株を買いたいという人がいないからです。

 

まとめ 不動産流通市場で価格を決めるのは「売主と買主」である

重要なことなので繰り返し言います。不動産流通市場で価格を決めるのは当事者である「売主と買主」です。ハウスメーカーではありません

買主…冷静に「相場価格」の見極めを

先に述べたとおり、スムストックはハウスメーカー側が独自に行っている査定方式であり、スムストック方式で査定した建物残価が、建物販売価格通りという担保はありません

そのため、実際の相場とかけはなれた販売価格設定されている可能性があります。

ハウスメーカーの建物に安心感はありますが、スムストックだから価値があるのではという考え方はハウスメーカー側の一方的な考え方です。

実際の相場価格を見て、冷静に指値対応等されると良いかと思います。

売主…売却査定は1社ではなく「数社」依頼して冷静に判断

「売却査定」を依頼する際は、ハウスメーカー子会社のスムストック査定のみだけでなく、従来の査定方式を使用している三井のリハウス、住友不動産販売、東急リバブルや、地場の不動産仲介業者等にも売却査定依頼し、数社比較検討することをおすすめします。

複数の業者に査定依頼し、査定報告書を比較することで「相場価格」を冷静に判断することができます。

ただし、囲い込みをする業者もいますので、ご注意を。

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