不動産仲介業者の囲い込みとは

マンションを売却する際、事前に知っておきたいことがあります。
それは、不動産仲介業者による「囲い込み」です。

この記事を見れば、囲い込みについて詳しく知ることができ、マンション売却の際に囲い込みについての知識武装をできるようになるでしょう。

目次

不動産仲介業者の囲い込みとは

不動産の仲介手数料のしくみ

不動産仲介業者の「売上」のほとんどを占めるのは、売主または買主からの「仲介手数料」です。

仲介手数料は宅建業法により上限が決まっています。

売買価格仲介手数料の上限金額
売買価格400万円超の場合売買価格×3%+6万円(+消費税)
売買価格200万円超400万円以下の場合売買価格×4%+2万円(+消費税)
売買価格200万円以下の場合売買価格×5%(+消費税)

例えば、売買価格が400万円超の場合、仲介手数料の上限は「売買価格の3%+6万円(+消費税)」となります。

売上の差が2倍、両手仲介と片手仲介

仲介手数料の上限が決まっている以上、ひとつの取引で多くの売上を上げるには、方法はひとつしかありません。
それは、不動産仲介業者が一社で売主と買主の仲介を行う、いわゆる「両手仲介」です。
仲介手数料を売主と買主からそれぞれ得られるため、合計の仲介手数料は「6%+12万円(+消費税)」と、売上が2倍に増えます。

不動産仲介業者は売主と媒介契約(売却委任)を結び、物件の売却活動を行います。
もし買主を物件に案内して購入まで導ければ、売主から「3%+6万円(+消費税)」、買主からも「3%+6万円(+消費税)」を支払ってもらえるのです。

一方で、他社の不動産仲介業者が買主を連れてきた場合、売主と媒介契約を結んだ不動産仲介業者は売主からの仲介手数料「3%+6万円(+消費税)」しか得ることができません。
片方だけなのでいわゆる「片手仲介」と呼ばれます。

囲い込みで情報を制限する

ひとつの取引で売上の差が「2倍」になる可能性があるため、売主と媒介契約を結んだ不動産仲介業者は買主を自社で連れてきて「両手成約を狙いたい」という心理が働きます。

一番酷いケースは、専任媒介契約(あるいは専属専任媒介契約)を結んだにもかかわらず、指定流通機構(REINS)への登録期限を過ぎても掲載しないパターンです。
これは明確な宅建業法違反です。
しかし、最近はここまで酷いケースは減っています。

それでもなお、奇妙なことは起こります。

実際に不動産に申し込みをしている人がいないにもかかわらず、他社の不動産仲介業者からの問い合わせ時は「売り止め(申し込みしている人がいるのでお断り)」にする一方で、一般客(エンドユーザー)からの問い合わせ時には「ご紹介できます」という対応にして、両手成約の可能性を上げます。

では、具体的にどのようにして囲い込むのか。

例えば、三井不動産リアルティの神奈川県の某支店では以下のようなやりとりがなされている。

不動産仲介会社役「物件確認なんですが、○○○(物件名)なんですけど……」

支店担当者「あ~、話入ってます(=すでに交渉中です)」

それから16分後、今度は一般客のふりをして同店に電話してのやりとりは以下の通りだ。

一般客役「ホームページで見たんですが、○○○(物件名)って今は空いているでしょうか?」

支店担当者「ご紹介可能です」

一般客役「あ、本当ですか」

支店担当者「まだ内覧した人は一人もいないので、今週末から内覧可能です」

引用元:大手不動産が不正行為か流出する”爆弾データ”の衝撃|ダイヤモンドオンライン

問い合わせをしてきた不動産仲介業者の先にいる購入検討者が物件を購入する可能性があるにもかかわらず、「すでに交渉中」といわれてしまえば、それまでです。

囲い込みをされやすい物件とは

囲い込みをされやすい物件の例をあげてみます。

  • 売買金額が高い物件
  • 週末に新聞の折込チラシ等で告知してオープンルーム(販売会)をやる予定の物件
  • 自社のお客さんと商談中で週末にクロージング(購入意思の確認)予定の物件

売買金額が高い物件


例えば、売主と媒介契約を結んでいる物件が3件あるとします。

物件名売買金額仲介手数料
アパートA1億円306万円(+消費税)
マンションB3,000万円96万円(+消費税)
マンションC500万円21万円(+消費税)

ここで、2つのケースを見てみましょう。

1つ目は、アパートAを両手仲介。
仲介手数料は片手仲介の倍となる「612万円(+消費税)」です。

2つ目は、アパートAを片手仲介「306万円(+消費税)」、マンションBを両手仲介「192万円(+消費税)」、マンションCを両手仲介「42万円(+消費税))。
仲介手数料の合計は「540万円(+消費税)」です。

つまり、後者は取引が3回にもかかわらず、前者のアパートA両手仲介1件の方が仲介手数料の金額が多いということです。

広告費をかけて告知して週末にオープンルームを予定している物件

営業が週末の予定スケジュールを空け、かつ広告費をかけてオープンルームをする予定の中、オープンルーム前に他社が連れてきたお客さんが申し込みを入れると、広告は無駄になり、週末の予定が変わる可能性があります。

自社で客付けできそうな可能性があるお客さんとの折衝を控えているのであれば、その結論が出るまでは囲い込みをしておこう…ということもあり得ます。

囲い込みは機会損失

数社に査定依頼をして、さまざまな説明を受け、「あなたに任せたい!」と信じて決めた委任先で、思い出や愛着のある住宅の情報を囲い込みされているのです。
売主にとっては、機会損失以外のなにものでもないでしょう。

不動産仲介業者から問い合わせあった際に「一番手がいます。二番手で良いのであればご紹介できます。」という対応にして、一般客(エンドユーザー)からの問い合わせ時は「ご紹介できます」という対応をします。
当然、一番手などいるわけもなく、まったくの嘘です。

当然ながら、これらは売主の知らないところで行われます。

テレビ東京系列の番組「ワールドビジネスサテライトで特集(2015年5月26日)

テレビ東京系列の番組「ワールドビジネスサテライト(以下WBS)」で、不動産仲介業者の囲い込みの実態についての特集がありました(2015年5月26日)。

WBSの独自調査では100件中9件が囲い込み

WBS出演者の大浜キャスターも参加した「WBSの独自調査(電話による物件確認)」では、「100件中9件に囲い込みの疑いがある(囲い込みりつ9.0%)」との結果となりました。
週刊ダイヤモンドの調査記事(囲い込み率12.9%)と、ほぼ同じです。

週刊ダイヤモンドによる不動産仲介業者の物件囲い込み調査 三井不動産リアルティ 住友不動産販売 東急リバブル
引用元:大手不動産が不正行為か流出する”爆弾データ”の衝撃|ダイヤモンドオンライン

週刊ダイヤモンドが調査した記事によると、大手不動産仲介業者三社の囲い込み率は、「住友不動産販売:囲い込み率5.4%」、「東急リバブル:囲い込み率3.8%」、「三井不動産リアルティ:囲い込み率21.2%)」です。

大手三社は囲い込みの事実を否定

しかし、WBSの番組内でも、大手不動産仲介業者三社(三井不動産リアルティ、住友不動産販売、東急リバブル)は、囲い込みの事実について否定をしていました。

三井不動産リアルティ
「これまで囲い込みの事実が明らかになったケースはありません」

住友不動産
「(囲い込みの)実態はないと認識している」

東急不動産ホールディングス
「(囲い込みの)事実はないと認識している」

売主が不動産の「囲い込み」を対策する方法

売主が直接「囲い込みを確認する対策・方法」をご紹介します。

電話で「物件確認」

不動産仲介業者の間では「物件の有無の確認(物件確認)」を電話で頻繁に行っています。

これから案内する物件に「申し込みがあるかないか」を、電話で確認する作業です。
申込が入っているにもかかわらず、お客様を案内したら「なんで紹介したんだ!」とトラブルになる可能性があるので。

囲い込みの確認は、以下の通りです。

  • 不動産仲介業者を装い、電話で「物件確認」を行う
  • 一般客を装い、電話で「問い合わせ」する

電話2回により、売却している物件が囲い込みされているかどうかを判別できます。

不動産業者の時に「申込みあり」、一般客の時に「申込みなし」だと囲い込みの疑い

不動産仲介業者を装って物件確認した際に「空いてません」と言ったにもかかわらず、一般客を装って物件確認した時に「空いています」と言ったら、囲い込みの疑いが高まります。

Trrrr…

売側不動産仲介業者「はい、○○不動産です。」

売主「▲▲不動産の■■と申します。お世話になります。物件確認をお願いします。」

売側不動産仲介業者「はい、どうぞー。」

売主「●●区●●の中古マンション、●●●●万円です。」

売側不動産仲介業者「えー、その物件、1件申込み入ってます。」

Trrrr…

売側不動産仲介業者「はい、○○不動産です。」

売主「すみません、今インターネットを見てるんですけど、●●区●●丁目のマンション、●●●●万円を案内してもらうことはできますか?」

売側不動産仲介業者「はい、●●区●●丁目の中古マンションはご案内可能です。」

売主「物件のあるエリア、妻が気に入ってるんですよね。ちなみに、まだ申し込みとかはないですか?」

売側不動産仲介業者「はい、まだ申し込みはないですよ。ご案内しましょうか?」

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