私の趣味には投資、旅行、そして「登山」があります。これから暖かくなって登山をする機会があれば、登山に関する記事もブログに掲載していきたいな、と考えています。
さて、その登山で注意を払わなければならないのが「熊(クマ)」です。日本国内には、
- 本州に生息するツキノワグマ(体長1m弱)
- 北海道に生息するヒグマ(体長2m超)
の二種類の熊が生息しています。
今回は、1970年に起きた「福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ襲撃事件」の事例を元に、もし熊に遭遇した時の対応・対策法をご紹介していきます。
福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ襲撃事件とは?
登山中に「熊に襲撃されてしまった悲惨な事件」として、有名な事件があります。
1970年に北海道の日高山系「カムイエクウチカウシ山(標高1,979m)」で起きた「福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ襲撃事件」です。
この事件は、福岡大ワンゲル部の部員5人が、北海道「カムイエクウチカウシ山」近くの九の沢カールにテント設営後、若い3才のメスのヒグマに遭遇したところから始まります。
ヒグマは外に置いていたザック(キスリング)を漁って食料を貪るのですが、部員たちは隙を見てザックを熊から奪い返します。
しかし、熊という動物は「一旦手に入れたものは自分の所有物」として考えます。それを人間に取り返される行為は、熊からみれば「人間に自分の所有物を奪われた」という気持ちになるのです。結局、熊の所有物を奪い返すという行動が、ヒグマの逆鱗に触れ、敵とみなされてしまいます。
その後、福岡大ワンゲル部パーティは2日間半に亘り、同じヒグマによる7回の執拗な襲撃に遭い、尊い3人の命が犠牲となってしまいました。
なお当時、北海学園大学、帯広畜産大学、鳥取大学、中央鉄道学園のパーティも八の沢周辺にいましたが、ヒグマに執拗に追いかけられたのは福岡大学のパーティだけでした。熊は敵とみなした相手だけを追いかけていたのです。
熊からザックを奪い返したというひとつの行動により、熊に刺激を与え、尊い命を奪われてしまうことになってしまいました。
では、登山中に万が一熊と遭遇した時、どのような行動を取ればよいのでしょうか?
熊に遭遇した時の正しい対応
「福岡大ワンゲル部熊襲撃事件」の後に検証したVTRの内容をもとに、引用してご紹介していきます。
死んだふりをするのは?
死んだふりは×
熊は好奇心が強い動物で、物を押しつけて運んだり、点検する習性があります。死んだふりをすると、熊は近寄ってきて、鋭い前足の爪で攻撃をしてきます。
火で威嚇するのは?
火で威嚇するのは×
福岡大ワンゲル部の学生たちは初めてヒグマと遭った時に火を炊き、ラジオのボリュームを上げて撃退を図りました。
しかし、実験では火を見て余計に近寄ってくる危険さえ感じられました。余計に好奇心を煽るだけとなってしまいます。
音で威嚇するのは?
音で威嚇するのは×
熊の目の前では大きな「銃声音」を鳴らしても動じません。大きな音を立てて撃退するのは効果なしという結論です。むしろ、余計に好奇心を煽るだけとなってしまいます。
背を向けて逃げるのは?
背を向けて逃げるのは×
福岡大ワンゲル部パーティの最初の犠牲者は、ヒグマが近づいてきたあまり、逃げ出したところをヒグマに追われて襲われました。最大時速60kmと言われるヒグマに追いかけられて逃げ切ることはできません。
熊と目線をそらさず静かに後ずさり
熊から逃れる手段として一番良いとされているのは、「熊と目線をそらさず、静かにゆっくり後ずさりする」事と言われています。
ただし、相手は野生の動物なので、100%成功するとは限りません。あくまでも助かる可能性が高い方法ということです。
福岡大ワンゲル部事件の通り、熊は一度奪ったものに執着する習性があります。もしザックや食料を奪われた場合は、奪い返さないのが賢明です。むしろ、ザックや食料に時間稼ぎをしてもらい、その間に後ずさりしてその場から立ち去るのがよいでしょう。
何とかやり過ごしたと思っても、油断は禁物です。福岡大ワンゲル事件の場合、ザックやテントを捨てた後も彼らにターゲットに絞っていました。熊が奪ったもの(熊の所有物)と同じ匂いがしているので、依然ターゲットになる可能性があります。
一刻も早く下山しましょう。
熊に襲撃された時の対応
熊に遭遇した際、必ずしも上手く逃げ切れるとは限りません。熊との距離が近づいてしまい、熊に襲撃された場合、どのような行動を取ればよいのでしょうか?
「もうどうしようもない状況」になったら、下記の方法を取ります。
- 手を首の後ろに回し、頸動脈を守る
- うつ伏せ(お腹を下)の姿勢を取る
- その際に股を少し開く
[aside type=”normal”]「東野・岡村の旅猿」の番組内で、「北海道の知床半島でヒグマを観よう」という企画の際に、ヒグマに詳しい方が紹介されていた対応法です。[/aside]
熊対策グッズ
ここで、「熊に遭遇しないための対策」、「熊に遭遇してしまった際の対応」の際に役立つアイテムをご紹介します。
熊よけベル
[colwrap] [col2][/col2] [col2][btn class=”simple”]ハイマウント(HIGHMOUNT) マジックベアベル 13040[/btn][/col2] [/colwrap]
消音機能付きの熊よけベルです。
まずは「熊に遭わない」というのが何よりの熊対策となります。
熊撃退スプレー
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[col2][/col2]
[col2][btn class=”simple”]モチヅキ(MOCHIZUKI) 熊ヨケスプレーCA230カウンターアソールト 02194[/btn][/col2]
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まずは熊に出逢わないことが第一。もし万が一熊に出逢ってしまった場合は、正しい対応法でその場をやり過ごすのがベストです。
しかし、それがもし成功しなかった場合は、撃退するほかありません。
スプレーにはガス状の唐辛子エキスが入っており、噴射すると5m程度まで射程におさめます。
非常に高額ですが、熊が出没しやすい登山エリアに登山をする際は、「万が一の保険」として持っておくとよいかもしれません。
熊の理解を深めるためにオススメの本
さいごに、リアル登山では熊に遭いたくないものですが、小説の中で熊に会える、そんな本をご紹介します。
面白いもので、何回か登山を経験すると、小説の中で活字で描かれている風景に身を置いた際、「自分自身が小説を読んでいるのではなく、まるで登山をしているかのような感覚」にとらわれることがあります。
ウエンカムイの爪
[colwrap] [col2][/col2] [col2][btn class=”simple”]ウエンカムイの爪 (集英社文庫)[/btn][/col2] [/colwrap]
「ウエンカムイの爪」は東北地方の狩人「マタギ」や自然動物に知見のある熊谷達也さんの作家デビュー作。
北海道の大自然で動物写真家がヒグマと遭遇するところから始まる物語です。「第10回すばる賞新人賞」。200ページほどなので、2時間ぐらいあればさくっと読み終えることができます。
邂逅の森
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[col2][btn class=”simple”]邂逅の森 (文春文庫)[/btn][/col2]
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第17回山本周五郎賞と第131回直木賞を受賞した「邂逅の森」も面白いです。
東北地方で熊やアオシシを狩る狩人「マタギ」の半生を描いた作品です。ボリュームがたっぷり、自分が経験できない、壮大な人生を経験することができます。
まとめ
まずは熊に遭わないようにする。もし遭っても大声を出したり背中を向けて一目散に逃げるのではなく、熊の目をしっかり凝視して、ゆっくりゆっくりと後ずさりしましょう。
そして、やり過ごしたら、すぐ下山です。
コメント
コメント一覧 (2件)
いざクマを目にしたら、背を向けて逃げてしまいそうですね。
冷静な行動をとれそうにもないです・・・。
昨年6月1日から33日間北海道を回ってきました。羆との遭遇、鹿との衝突を避けるため、朝8時までは山に入らない、夕方5時までには宿泊場所に着くを基本に決めて、行動しましたので、幸い羆を見ることはありませんでした。クマヨケ・グッズとしては、クマヨケスプレー(2本)、エアーホーン(ポンプ充填式)、熊鈴、ナタ、ヤマガタナ、爆竹、ロケット花火、煙玉、ラジオを持参しました。一番使えなかったのはラジオ(放送が受信できない)、一番使わなかったのは熊鈴でした。沢筋などで使うつもりで持って行きましたが、実際に使うと、うるさくて、周りの音が聞き取れないため、途中で音を消しました。考えているのと、実際の現場では、まったく違っていました。(山道の馬鹿歩きでは、鳴らしたことはありました)肝心な場所で、 一番使ったのは、エアーホーンと爆竹でした。 タイヤチェーン装着エリアで、ラーメンを作り、昼食をした時も、道端の下草が刈り込まれていなかったため、ときどき爆竹を鳴らしながら、ラーメンをすすりました。沢筋を歩き滝を見に行った折は、ときどき爆竹を鳴らし、エアーホーンを鳴らしながら滝を往復しました。 私たちが旅行したのは、閑散期のウイークデー主体のため、観光地以外ではほとんど人はおらず、滝などではいつも、人の足跡はなく、一番乗りでした。正直羆が出ても、不思議ではない雰囲気でした。 また大自然の北海道を45日ほどの予定で、ゆっくりと回ってみたいです。