先月6月末、テレビ東京のワールドビジネスサテライトを見ていると、EC(電子商取引)最大手の「Amazon」がリフォーム市場に参入したというニュースが取り上げられていました。
この記事では「Amazonリフォームストア」について、私の意見を述べていきます。
「Amazonリフォームストア」とは?
窓口リフォーム会社は4社
Amazonリフォームストアのウェブサイトを見てみると、現在4社が窓口となっています。
- 積和建設
- ソニー不動産
- 大和ハウスリフォーム
- ダスキン
積水ハウスグループの「積和建設」、昨夏に不動産参入で話題となった「ソニー不動産」、ハウスメーカーとしてだけでなく事業を多角化している大和ハウスグループの「大和ハウスリフォーム」、そして「ダスキン」の4社が窓口です。
「Amazonリフォームストア」最大の特徴
Amazonリフォームストアの最大の特徴は何か?
ウェブサイトを隅から隅まで調べてみましたが、結論からいうと…「施工費込み」定額制です。というか、ぶっちゃけこれしか特徴ないです。
さらにいうと、施工費込み定額制は特徴なだけであって、メリットかどうかは分かりません。デメリットになる可能性もあります。
現場に行かないと「見積もりよう」がない
私が不動産売買仲介の営業をしていた頃も、お客様からよく「リフォーム見積もり依頼」をいただくことがありました。
その際はお客様の予定を伺い、リフォーム担当者といっしょに現場を確認しに行きます。
当然です、なぜならリフォーム費用は現場を見に行かないことには「見積もりよう」がありません。現場を確認しないと施工費に大幅なブレが生じるリスクがあるからです。
定額制のロジックは「盛ってる or 赤字覚悟」
そのリフォーム費用を「定額制」にするとはどういうことか?
簡潔に言えば「金額を盛っているか、赤字覚悟で先出しジャンケンしているか」ということです。
とあるウェブサイトを見たところ、業界関係者の言いなりと思しきライターが「Amazonリフォームは価格の透明性がある」と書いていましたが、ものは言いようですね。
言い方を換えれば、「ブラックボックス」です。
とはいえ、その真相は「相見積もり」を取らないと分かりません。相見積もりとは他でも見積もりをとって見積もり比較することです。家を建てる時はハウスメーカーや工務店を数社比較すると思いますが、それと同じことをリフォームでもやるわけです。
消費者は「実例」が見たい
また、リフォームを検討する消費者はメーカーのサンプル写真が見たいわけではありません。
- リフォーム実例
- 実際にリフォームして感想はどうなのか?
- 金額はいくらだったのか?
という部分を知りたいはずです。
しかし、Amazonリフォームストアを見ても、キッチンやバス・トイレ・建材メーカーが提供した「サンプル写真」しか掲載されておらず、施工費込み定額料金以外、よく分かりません。
一方、日経トレンディやWBSでも話題を集めたリノコでは、気になるリフォーム事例を写真付きで公開しています。キッチンのメーカー・シリーズの価格帯をひと目で比較できる「価格で比較!キッチン」などのコンテンツも消費者にわかりやすいつくりです。
リフォームの営業に直接会って相談した方が、スムーズ
これを言ったら元も子もないですが、そもそもどんなメリットがあるのかよくわからない「何十万円もする商品」を、商品をネットで注文する人がいるのか?と懐疑的です。
キッチン「881,000円」と書いてあっても「ハイ、ポチッと注文」となるのか?かなり疑問ですね(この時点では費用は発生しません)。
たとえば、カスタマイズが豊富なキッチンなどは、Amazonリフォームストアに掲載されているキッチンメーカーの提出写真で比較して見ていくよりも、リフォームの営業に直接会って話した方が話が早いしスムーズです。
正直、私が利用することがあるとすれば、ダスキンの「エアコンクリ―ニング」と「レンジフードクリーニング」ぐらいですかねー。
流れも「ごく普通」
引用元:Amazonリフォームストア
上記はAmazonリフォームストアでの流れが記載されています。1~3番に「現場調査・工事内容打ち合わせ」まで無料とありますが、「当然」です。
4番の「Amazonにカード決済する」という部分以外、一般のルートでリフォームをする時と同じ、ごく普通の流れです。
リフォーム会社が「販路」の窓口を増やしただけ
結局は、リフォーム会社の販路拡大のために「Amazon」という大手ECサイトに窓口を増やしただけに過ぎません。
2015年6月末に放送されていたWBSでは積水ハウス[1928]の社長が「Amazonリフォームストア」についてカメラに向かって熱く語っていました。
これは私がいつも感じていることですが、事業セグメントを多角化している大和ハウス[1925]からは「Amazonリフォームストア」や「スムストック」も含め「最悪コケてもよし」という余裕が感じられます。
しかし、事業セグメントを「住」にこだわっている(というよりも何もできない?)積水ハウス[1928]からは一切その余裕が感じられないんですよね。
大和ハウス[1925]に株価に差を付けられ、なんとかリーマン前の高値を超えようと自社株買いをし、ROEを向上させているようですが、もっと根本的なところに手を打っていかないと、厳しい気がします。
インターネットでモノを売るのは難しい
現実には、数千円の商品でも、インターネットでモノを売るのは難しいです。
ましてや、数十万円~数百万もするリフォームを受注するには、消費者にわかりやすいコンテンツ・ウェブサイトを構築しないと厳しいでしょう。
「その商品を買ったらどんな生活ができるのか?」を、いかにして想像してもらえるかがカギです。
昔は、住宅は寝ていても売れました。
人口よりも住宅の供給戸数が少なかったからです。しかし、今は違います。
住宅メーカーの経営陣に「寝ていても売れた時代の元営業マン」が、「当時の感覚のまま」でいるとすれば…考えを改めない限り、今後も間違った施策を繰り返すでしょう。
「EC大手のAmazonを窓口にすれば、リフォームも受注できるんじゃないか?」という見通しがあるのであれば、見通しが甘すぎですね。
リフォーム費用は「相見積もり」がおすすめです
相見積もりのメリット1:費用を抑えられる
複数社にリフォーム費用を「相見積もり」をすれば、詳細の見積もりを見て比較検討ができるうえに、値引き交渉の材料にもなります。
相見積もりのメリット2:リスク分散
注文住宅やリフォームの場合、会社だけでなく担当者によって当たり外れがあります。
フィーリングが合わない担当者とは、最後まで合いません。
リスク分散の観点からも、複数社に見積もりをとってリスク分散しておくのがよいかと思います。
注目のリフォーム会社
消費者目線に立ったリフォームのコンテンツがを充実しているリフォーム会社です。
リノコ | セカイエ株式会社が運営。写真付きのリフォーム事例(ビフォー&アフター)コンテンツが豊富。メーカーのショールームとタイアップした見学会を実施。 |
LOHAS studio | 株式会社OKUTAが運営。自然素材を利用したリフォームなど、デザイン性や質感にもこだわったリフォームに特徴。エリアは一都三県のみ。 |
まずは、ビフォー&アフターの事例をチェックしたうえで、直接担当者と会って話をするのがよいかと思います。
また、個別の会社を一個一個チェックしていくのが面倒な場合は、SBIライフリビングが運営するベスト@リフォームでカタログと見積もりを一括請求してから消去法で比較検討するのも選択肢のひとつです。
コメント
コメント一覧 (2件)
全く同感です。
開けてみて定額で収まらない場合の方がリフォームは多いのでは無いでしょうか。
見なかった事にするんですかね?
あいさん、コメントいただきありがとうございます。
あいさんが仰られる通り、実際に現場を見たら「あちゃーこれじゃ定額に収まらないなー」という展開は往々にしてあり得ると思います。そのために金額を盛っているか、あるいは、赤字覚悟の設定にしつつも、他の提案でカバーしていこうという考えですよね。
あくまでも、販路拡大のための「引合入手の手段」に過ぎないということでしょうね。
アポが取れば会える。会ったら色々提案できる。会わなきゃ何もできないから会うためにAmazonのフィールドを選んでみた…といったところだと思います。
家電であれば、実物を実店舗で見た後、ECサイトで購入するということはあり得ると思います。しかし、リフォームについては、厳しいと思いますね。